なにかのバグか、YouTubeのショート動画がけんた食堂のネギとワカメのぬたしか見れなくなり、これはこれで不毛なループから抜け出せるようになったので、そのままにしている。


部屋が片付けられず、三ヶ月ほどが経った。とうとう母親が片付けた。暫く私が動くか黙っていたようだが、私が何も言わずに大量のほこりと寝ているのを見て、多分耐えられなくなったのだと思う。私はベッドに横たわりながら、これを捨てるか捨てないか、を答えた。あまり脳が働かないまま答えたので、いろんな服がゴミへと消えた。いつか困るだろう。そのうち記憶がなくなるので、気にしなくなるだろう。


なにか思い立ち期待をしてから、次の瞬間に全てが萎む日を、繰り返している。起きるのが苦痛で、仕方がない。起きても、仕方がない日が、多い。『光のとこにいてね』、もう少し自分に刺さるはずだったのになあ、と思いながら読み終えた。何かを傷つけながら、自分の居場所を選ばなきゃいけないの、嫌だなあ。


自分で料理をして、おいしくない。私は料理が下手だし、作っているうちに空腹は有耶無耶になるし、片付けが面倒だ。


本当は美味しいアイスティーを飲んだり、友達からもらってスタバカードを、使ったり、してみたいけど、坂を登るのが億劫で、街に出られない。


RDJのアカデミーの様子を見て、それからパレスチナのこと、3.11のこと、考えなきゃ、と思うけど、全部面倒で、画面見られなくなった。そして、全部面倒、で済ますことのできる自分の途方もない特権と、無自覚さたるや、物凄い。


どうでもいいことばかりが、私の中に残っていて、苦しい。恥ずかしいことは誰にも話したくない。自分が好きな人に必ず好かれるとは限らないことなんて、みんなはずっと前に知ってることなのに、なんで私はずっと分かってないんだろう。気持ちを天秤で常に吊り合わせる関係なんて、ちっとも健全じゃないって思ってるのに。悲しいなあ。好きなんだよ。だから誰も触らないで。


結局私は好きなものを貫けない。そのくせ、私は自分の好きを認めてほしくて仕方ない。弱くて恥ずかしい。いつか優しくて強い人になってみたいよ。そうしたら世界がどんな風に見えるか知りたいよ。馬鹿らしくても捨てずにいられるのはどうしてだよ。


死にたいなんて言えるわけないこんなクソみたいな生活しておいて。


同窓会の誘いが来て、グーグルフォームで連絡するやつ。今の自分を見せる勇気が全く持てなくて、やめた。予定があっていけません、と嘘をついた。私に予定なんてない。また今度楽しみにしてます、と嘘をついた。友達の結婚式は、行く、と言ってしまった。どうしよう。まともな私でいられるかな。7月に、海外旅行をしよう、と言われ、そうだねえ、と返してたら、するすると予約を取られていて、すごく不安だ。四日間も逃げられない場所で、人と過ごすことのできる自分でいられるのかなあ。


治らなきゃいけないとどこかで思っていて、でも何がおかしいのか分からないし、そもそも正しい自分を覚えていない。日光に当たらないと親が悲しむ。苦しい。怒らないでほしい。誰も怒らないでほしい。我慢もできない自分が情けない。


本当は知らないものにこんなに託してもいいのかなあ。今度こそちゃんと終わりにしないとなあ。全部あげるよ。好きなのはずっと嘘じゃないんだよ。本当に好きなんだよ。うまくできなくてごめんね。

 

結構毎日もういやだけど、別に誰にも言えないやって感じ。誰かと会ってなにかをごまかし、それでも帰り道さみしい。繰り返し。私の部屋は狭く苦しい。だけどここしかないよ。みんな折り合いつけて生きてる。なのに私は私を助けられず、普通にゲームオーバーです。おつかれさまでした。

特に何かあったわけでもないのに、意味がわからないことが続く。

思考と体と心の大きさが全て異なってるように感じる。

手を差し伸べてくれる人の優しさに応えられず、ますます意味がわからなくなる。

大きなものを好きになる、ミーハーな心を何より恥じている、ことを恥じる。

この世で意味のあることはないのに、意味を見出さなきゃいけない行為に困る。

大したスケジュールもないのに把握していない。

働いてる人と話すと、時間を共通していないと思う。

自分が役立たずだと知るのは未だに悲しく、身の置き所が分からないが、動き出すのは苦しい。

なんでもっと頑張らないのと言われた言葉が頭をぐるぐるしている。

本当はあと一ヶ月分失業手当が出るけど、怖くてハローワークに行けなくなってしまった。

はやく全て終わりたい。

全てを無意味に思う。

無意味に思っていないフリをして人と会っていて、辛い。

咳が治らない。

薬は何も飲んでいない。

生理が終わらない。

終わったと思ったら始まって怖い。

汚い血が出続けている。

面倒なので汚れた下着をそのまま履いて、ボトムも汚れて、部屋でうずくまってしばらく寝た。

何がしたいのか分からなくなる。

誰の言葉も背負えない。

ステーキ屋さんと、ドーナツ屋さんと、中華料理屋さんの、記事を見て、行きたいと思いながら寝るけど、起きたらどうとも思っていない。

動かないから腹が減らない。

なにをしてもいいはずなのに、なにもできない自分が恐ろしい。

何も大切にできずに、今年も消えるかもしれない。

現実を見る意味が、やはりない。

いらない本ばかりが増えていき、怖い。

うっすらと気持ち悪い。

どの属性にも当たらない喋る生き物は存在しないので、我慢をしなくてはいけない。

誰にも会いたくないが、なぜか断れなくて、怖い。

何を着ても似合っていない。

どんな髪型も似合っていない。

なぜかものすごく自分を醜く感じる。

段々と装う力がなくなっている。人と会ってる間に、そのままつまらない顔をしてしまう自分に気付き、恐ろしい。

建前が必要な会話がうまく話せなくなっている。

ただ焦燥感だけがある。孤独ではない。周囲に人がいることを理解している。ありがたい。同時にどうしようもないとも感じ、苦しく思う。

もういいやべつに。

みんなが苦しんで生きている。

そういうものだと思う。

一人で苦しめたらいいが、周りに迷惑をかけている。

何もできない。

他人に期待し、自分に失望し続けている。

底まで早く諦めたい。

日曜日

先輩夫婦と会った。

どちらも大学のサークルの先輩で、遠距離結婚をしている。ゴールデンウィークで妻の方が東京に来ていて、彼女の新幹線までの時間、お茶に誘われたのだった。

連休最終日、渋谷の椿屋珈琲は空いていた。値段設定が高いからかもしれない。私たちは遅い昼食を取ることにした。彼のホットコーヒーはアイスでやって来て、彼女のみかんジュースはアイスティーになっていて、私が食後に頼んだミルクティーも食前にやって来て、全てが間違っていたが、私たちは特に気にしなかった。

私は彼らが好きだった。彼らが在学中、サークルで付き合ったと知った時は、そうか、と思った。初デートの際、彼女は食事中に寝たそうだ。眠かったらしい。彼の方は、フーンおもしれー女、と思ったらしい。とても二人らしいエピソードだと思う。その二人が付き合うのは納得も出来たし、少し寂しくもあった。彼らは一次会で二人で帰るようになってしまったからだった。

不思議な二人だった。優しいわけではなく、冷たいわけでもなく、適度にドライで、適当で、愉快だった。しょっちゅう遊ぶほどの仲ではなかったが、私は彼らを面白いと思い、彼らも私を面白いと思っていた。

二人とも私への興味がそれほどあるわけでもなく、私も彼らの私生活に興味があるわけではなく、しかし話した。彼女が結婚を選んだのが意外だったので、理由を聞いた。彼の方が海外赴任になる可能性が高く、着いていくために結婚したのだという。ところが保留になったので、まだ実家で親が作った食事を食べてるイエーイ最高、とのこと。

「結婚しないとついていけないの?」と聞くと「難しいんじゃない?遠距離のカップルって、結構転勤が決め手になるらしいよ」と返ってきた。そうなのか。分からないことが多い。

「でも結婚してる自分の他に、結婚してない自分も欲しい」と彼女は言っていた。

「別に何も変わらない。遠距離だし。仕事も旧姓を使っている。今の婚姻制度にずっと不満はある。同性婚を認めない理由もわからない。そんなことしてたら、いつか私たちに返ってくるよ、と思っちゃう。あのさ、何かになりたいって思う?」

思う、と私は答えた。

「だよね。結婚しても、何者かになりたい願望は消えない。私は消えないだろうな、と思っていたけど、やっぱりそうだった。人生って難しい。てか五月って最悪。入った瞬間に憂鬱になる。あとこの人、雨だから行かないって朝からごねてた」

「いや会いに来いよ!!」私は彼に怒った。

「ダルい」と彼は言った。

彼女は「だから、あれなんか今日肌綺麗だね、眉毛もいいねって褒め続けて、誤魔化して連れてきた。褒められると伸びるタイプだから」と得意げにしていた。

私の話をしたら、「大学の時からなんか生きづらそうだなって思ってた」と彼女はハッキリ言ってきたので、私はそうだよねー、と答えた。「でも明るいじゃん。暗いと思ったことない」と彼の方は言ってくれた。そうかも、とも思う。私は明るい部分もある。そういう性質もあると最近感じる。そして彼がそう思うのは、私があなたの前では明るく振る舞いたいと思っていたからである。ならば成功していたということで、とても喜ばしいことだ。


二人は、興味のないことに興味のあるふりはしない。違うと思ったことは違うといったり、流したりする。それが似ている、と言うと「えー」と彼が嫌がっていた。今月は三つも記念日があって面倒だから一日で済ませたイエーイラッキー。と二人ともが言っていた。そういうとこ似てるじゃん、と思うけど。いいね、と思うけど。

「まだこの人と一緒に住んだことないけど、あと800年も一緒にいなきゃいけないの気が狂いそう」

「なんで神くらい生きる気でいるの?」一応彼女に突っ込むけど、「それくらい長く感じる」と普通に返される。会話が適当で、楽。


思ったことはどっちもちゃんと言いそう、と話を振ると、彼の方が彼女に不満を訴えた。

「出したらお茶しまって。腐るから。それだけ。あとは全部諦めた」

「また飲もうと思ってるんだよ。たまに忘れるだけ」

「飲んでないじゃん」

「君の見てないところで飲んでる」

いいね、と思った。なんか、分かんないけど、この二人好きだな、と思った。


彼女の新幹線の時間になって、彼らは東京駅に向かうことになった。有給取ってるなら帰るの明日にすればいいじゃん、と私は言ってみたけど、「無理。実家の布団で寝たいから」とものすごくよく分かる理由が返ってきた。私は帰ることにした。

雨の渋谷は淀んで、臭くて、終わっていて、私は電車に揺られながら「二人のこと好きだ。今度二人の話聞きながら寝たい」と彼女にラインを送った。「やろ!」とだけ返信が来た。そのまま既読スルーした。笑った。どうやってやるんだろう。そもそもどういう状況なんだ。別にやらなくてもいい。やろ!と言ってくれたことが嬉しくて、そこで満足する。

ʕʘ‿ʘʔ

私には嫌いなことがたくさんあって、その中の一つが盛り付けである。何かを作った後に、綺麗にお皿に盛る、アレ。ちなみに食事を作るのは、意味が分からなくて面白いので、嫌いではない。私が作るものは、全て何も美味しくないけど。味見をしないからかもしれない。作ってる途中で味が分かったら、もう食べる意味ねーな、と思ってしまう。自分でも、この思考回路は訳が分からない。

ともかく盛り付けが嫌いだ。そして苦手である。センスがない。楽しさがわからない。なので私が盛っても全く美味しそうに見えない。どうすればいいのかも分からない。ご飯を盛るのも苦手だった。小さい頃、家族みんなのご飯をお茶碗に盛り付けて、こんなにぺったり盛ったら全然美味しそうに見えないでしょ、と母親に言われて、ものすごく機嫌が悪くなった思い出がある。悪くなるな。アドバイスを受け入れろ私。

デコレーションや、ラッピングも同等に苦手である。何も楽しくない。綺麗に飾り立てたものを、貰ったり、お店で見たりする分には、ふぅん、で終わるのだけど、自分でやるとなると、何故か不快な気持ちになる。既存の食べ物をデコレーションして美しくする動画を見ると、すごく冷めた気持ちになる。例えば、プリンや、アイスを使ってお菓子を作るとか、そういうのも、へえ、と思う。プリンや、アイスを、そのまま食べればいいのに。だから、お店で買ったお惣菜を、お皿に盛るのも、なんだかな、と思う。一人暮らしをしていた時は、そんなことをしなくてよくて、そこだけが唯一嬉しかった。食器を凝るというのにも、あまり興味がない。外食をしたときに可愛いお皿だと嬉しいが、それだけである。インスタ映えするような可愛いスイーツにも「かわいいね」と言うが、これは「(世間的にこういう形のものは)かわいい(と言われているよ)ね」という意味であり、私の感情は含まれないことが多い。

話がずれてきた。

思うに、私は暮らしをよくする向上心というものがさっぱりないのだ。バルニー、助けてくれ。洗濯物干すのもヒップホップなのだし、とにかく私はヒップホップではない。つまり、枕カバーを定期的に替えるとか、シーツを洗うとか、衣替えをするだとか、掃除をするだとか、洗濯槽の汚れを気にかけるだとか、良い食生活を心がけるだとか、そういうものを優先順位に持ってくることが、本当に出来ない。生活というやつだ。その生活の極みな気がする。盛り付けというのは。食べたら無くなるものに対して、栄養以上を求める行為は、怖い。スポーツカーが欲しいとか、タワマンに住みたいとか、それくらいの生活に対する向上心を感じる。怖い。

結婚も、生活の極みな気がしていて、かなり恐ろしく、また不快に感じる。

起きる。

きこえた

電車で、まず下着が気になった。ブラジャーの、カップの、下の部分が、急に胸と噛み合わなくなったように感じて、気持ち悪くなった。ゴソゴソと動いていたら、隣の女の人が少しみじろぎした。降りて、各駅に乗り換えようかと思ったけど、人身事故でダイヤが乱れていて、少しでも早く帰りたかった。じっと前の人の、靴を見ていた。靴紐が変なふうにねじれていて、気持ち悪くなった。首周りが急に気になってきて、急いでマフラーを脱いで、シャツのボタンを外した。コートも脱ぎたかったけど、人が多くて、動けなかった。背もたれに触れているのが気持ち悪くなって、前屈みになる。タイツが、気になる。立ち上がって、喚きたくなって、それでも我慢していたら、苦しくなって、涙が出てくる。涙が出ると、鼻水が出てきて、マスクの中で、もっと息苦しくなって、次で降りようかと思うけど、次で降りたら電車が来ない。どこかで泊まろうかと思うけど、お金がない。お金がないのだ。わたしはおかねがなくて、だから、合っている下着も買えなくて、うそだ、下着が変えないのは、自分の体のことを考えるのが本当に嫌だからで、スマートフォンを見て気を紛らわそうとしても、画面見てるのが気持ち悪くなって、ケースに挟んだステッカーの、漫画のキャラクターを、ずっと指でなぞって、たすけて、と思った。助けてと思った。ずっと。あたまがおかしくなっているのがわかって、最寄りまでの、二十分、本当に、気持ちが悪くなった。座席に触れている、体の全てに違和感があって、こもった空気と、マスクが、私をもっとおかしくさせた。とても生きていけないと思った。最寄りについて、ふらふらと改札を出て、寒い夜の、日付が変わった住宅街を、歩き抜けて、早く家に帰りたいと、早く家に帰りたいと、言いながら、歩いた。とても生きていけないと思った。とても生きていけないと誰かに言いたかったけど、誰に言ったところで、と思ったので、ツイッターを開いて、とても生きていけないと、打とうとして、それでも、つながっている数少ないともだちに、心配をかけるのは、嫌だと思って、道の途中で、立ち止まった。助けてと思った。するとうしろから名前を呼ばれた。自転車に乗った友人だった。「どうしたの?」と彼女は言った。私は彼女の名前を呼んで、抱きついた。「今帰りなんだ。なにしてたの?」彼女は自転車を降りて、偏頭痛で午前は散々だった、と教えてくれた。私は、顔を見られない夜でよかったな、と思った。彼女と、他愛もない話をしながら、歩いて帰った。神様はいるかもしれないと思った。帰って、一日寝た。

 

悲しい思いをしたので泣いてしまうかもしれないと思ったけれど泣かなかった。一瞬喉の奥が詰まっただけだった。


友人たちと新年会をした。久しぶりに会った友人たちは変わらぬようで、でも少しだけ変わっていて、私は動揺してなんだかお酒をたくさん飲んでしまった。そして、そんな大層な話をしていたワケではないのだけど、気の置けない仲だからこその乱雑さで、お互いの地雷原を歩き回るような羽目になったのだった。途中、そういえば私ってこういうことを言われやすいし言ってしまうからやめたいんだった!と思ったのに、久しぶりの友人に対してのブレーキの踏み方を全く覚えておらず、ただアルコールの向かう方向へと一生懸命走ってしまった。自己嫌悪でいっぱいになる。人の話をいちいち訂正するのは好きじゃない。議論する気のない人との会話になると余計そうなるので、好きな話題にも興味のある事柄にも深掘りしないように気をつけた。ちいかわのナガノは一期一会を書いていた人なんだよ、というのに、それカナヘイと混ざってない?と訂正するのも諦めた。流れを止めるのは面倒臭かった。

 


そういや今仕事は何をしてるのかと聞かれ、働いていないと答える。「生きてるだけで偉いよ」と言われる。彼曰く、この世には何種類か人間がいて、私は「生きてるだけで偉い」人間らしい。他には、「朝起きることができて偉い人」、「仕事をしていて偉い人」などがいて、それぞれ出来る範囲が違うんだよ、と教えてくれた。私は生きてるだけで偉い人。生きてるだけで辛い人だから、生きてるだけで偉い人。急激に悲しくなる。

「目標ってある?」と聞かれる。ないと答える。「単純なことだよ、長期休みのために頑張るみたいなさ」と彼が言う。「勝手に作られたシステムの中で目の前にぶら下げられたニンジンをありがたがるみたいで嫌だ」と私は素直に返すと、「またそんなこと言ってるの」と目の前の友人が笑う。急激に悲しくなる。「社会システムに反抗しようとしてる」といじられる。そんなことしてないと私は答えるが、流される。私は黙り込んでしまう。なんだか眠そうだねと周りが笑う。元気出してよ、もっと飲もうよ。私はウーロンハイを頼む。本当は別に飲みたくないけど、笑わなければいけないので、頼んで飲む。

 

私は口が軽いらしい。どうせ広まるんだろうな、と覚悟して話しているらしい。自覚がなかったのでビックリした。固い自覚もないが。思えば、特に口止めされなかったことなら話していいと思ったことは話してしまっている、かもしれない。そうか。私が信頼している友人を、必ずしもみんなが信頼しているわけではないのだ。気付いてやっと恥じた。私のアホバカカス。もう誰も、私に何にも教えないでほしい。


二軒目に行くことになる。私は働いてないから明日の予定がないので、ついていく。ジントニックハイボールを飲んだ。隣のネパール人がしきりに話しかけてくる。富士山に登った話を殊更大袈裟に頷いて、すげー!と返しておく。恋人が出来た子に、全く興味がないのに恋人の話を聞いてみる。出身地と職業を教えてもらう。遠距離って大変だね、と言ってみる。こっちで職探ししてくれてるんだ、とのこと。よかったね、と言ってみる。ジントニックを飲む。

恋人がいる子②は結婚するつもり、と言う。そうなんだ、と答えてみる。

隣の友人に、クリスマスに後輩たちと遊んだ話をする。「ちょっと待って。その場にいる人、誰も恋人いないってこと?」と突っ込まれる。笑っておく。

 


好きなことは好きと言わなければいけないという話になる。みんな大好きだよ、とみんなが言い出す。私も嬉しくなって、みんなのこと大好きだよ、と言う。浅いなあ!といじられる。私はみんなのことが大好きで、みんなもそのことが分かってるけど、そう言われる。それに、私も誰かに言うことがあるのだ。誰かの愛をけなす。それに愛を持ったつもりになって。

 


隣のネパール人の連れの日本人がスタッフと揉めてる。白けた私たちは駅に向かうことにする。

 


友人が帰りたくないと言ったので二人でカラオケに向かう。酔った友人は寝始める。私は四時間歌い続ける。誰も聴いていないので楽だった。始発が走る時間になったのでもう帰りたいと友人を起こした。すると「靴がない」と言う。訳がわからない。しかし本当に、カラオケルームのどこを探しても靴はなかった。どうしようもなくなってフロントに電話で聞いてみると、届いてるとのこと。どういうこっちゃ。靴を履いている私がフロントまで取りに行く。「どんな忘れ物ですか」と若い店員に笑われる。「ホントに」と私も笑う。靴を履かせて友人をタクシーに乗せて見送る。私は人気のない駅に向かう。カラオケ代をもらうのを忘れたな。まあ、もらえないだろうなと思っていた。

 


なんで飲んでしまったんだろうと思う。なんでオールなんてしてしまったんだろうと思う。山手線のホームで水を買って頑張って飲む。どうか気持ち悪くなりませんようにと祈る。

 


帰り道、薄暗い中で自転車を漕ぎながら、ものすごく悲しくなっていった。わけもなく悲しかった。考えていけば、理由は分かるんだけど、そんなのも嫌だった。泣くかなと思ったが泣かなかった。電灯が少し滲んで見えただけで、私は坂を急いで滑り降りて、家に帰ってきた。

 

風呂に入る。パンツのゴムに沿ってびっしりと湿疹が出来ていた。ずっとタイツを履いていたからかもしれない。痒くて悲しい。本当に股間が嫌いだ。削り取りたい。無くなってほしい。リカちゃんや、ポポちゃんみたいになりたい。真っ平らで、何もなかったら、どんなに。


2022年は変な年で、でも最後の方は楽だったし楽しかったんだけど、それは思考のリソースを他のことに全投げしていたからだと気付いてしまった。つまり本来の私の思考を今日改めて思い知って、かなり困った。そうだった、これだった。

生きている知っている人間に会うのは面倒だ。どうしたって、私のことを考えなくてはならなくなる。人はみんな鏡だからとゆずが言っていた気がする。ゆず、嫌いだ。

 


寝る。